事業会社のM&A部門への転職を考えている方必見!採用動向や業務内容、求められる人材像を詳しく解説。さらに、転職成功のためのポイントも紹介。M&A部門でのキャリアアップを目指す方は必読です。
目次
近年、M&A市場が活況を呈する一方で、人材不足が深刻な問題となっています。企業の成長戦略としてM&Aを積極的に活用する傾向が強まる中、事業会社におけるM&A部門の人材需要が急速に高まっています。
しかしながら、M&A部門の組織体制は通常、少数精鋭で構成されているため、募集枠は非常に限られています。多くの場合、1~2名程度の採用枠しかなく、非常に競争率の高い狭き門となっているのが現状です。
▶目次ページ:M&Aの相談先(M&A業界への転職)
事業会社のM&A部門では、企業の成長戦略を実現するための重要な役割を担っています。主な業務内容は以下の通りです。
M&A部門の最初の重要な業務は、企業の成長戦略に沿ったM&A戦略の立案と検討です。この段階では、以下のような作業を行います。
• 純粋な投資リターンや本業とのシナジー効果など、M&Aの目的を明確化
• 役員の承認を得るため、M&Aのメリットやストーリーを整理・検討
• 具体的な方針の決定
M&Aの必要性やメリットを具体的にまとめ上げることで、スムーズな承認プロセスにつながります。
実際のM&A案件の多くは、自社で直接探すよりも、M&A仲介会社や取引銀行から持ち込まれることが一般的です。この段階では、以下のような作業を行います。
• 関心を持てる案件の選別
• 秘密保持契約・アドバイザリー契約の締結
• 企業概要書の入手と分析
M&A仲介会社を効果的に活用することで、より多くの優良案件にアクセスすることができます。
案件の検討を進める中で、売主との直接的なコミュニケーションと交渉が重要になります。主な作業は以下の通りです。
• トップ面談の実施
• 意向表明書の作成と提出
• 基本合意書の締結に向けた交渉
この段階では、双方の意思疎通を図りながら、取引の大枠を固めていきます。
役員の承認を得た後は、対象企業の詳細な調査と評価を行います。主な作業内容は以下の通りです。
• 財務、法務、業務、IT等の観点からのデューデリジェンス実施
• 企業価値評価の実施
• 関係部署(経理部・法務部・情報システム部など)との連携
• 外部アドバイザーとの協力体制の構築
特に非上場企業の場合、価値算定が困難なケースが多いため、専門家の支援を受けながら慎重に進めていきます。
デューデリジェンスと企業価値評価の結果を踏まえ、最終的な契約締結とクロージングに向けた作業を行います。
• 売主との最終交渉
• 契約書の作成と確認
• 必要に応じた業務提携の検討
• クロージング手続の実施
この段階では、双方の利益相反を避けつつ、公平な条件での合意形成を目指します。
M&A成立後は、統合プロセス(PMI: Post Merger Integration)の推進が重要な業務となります。主な作業は以下の通りです。
• シナジー効果実現に向けた施策の実行
• デューデリジェンスで検出したリスクの緩和策の実施
• 統合計画の進捗管理と定期的なモニタリング
• 必要に応じた対応策の検討と実施
PMIの成否がM&Aの成功を大きく左右するため、綿密な計画立案と着実な実行が求められます。
事業会社のM&A部門でのキャリアには、多くの魅力があります。以下に主な特徴をまとめます。
1. 幅広い業務経験: M&Aに関わる専門業務だけでなく、企業経営の様々な側面に触れることができます。初期の相談
から実行、事業計画策定まで、幅広い経験を積むことが可能です。
2. 部門横断的な協働: 経営陣、各事業部門、財務、経理など、様々な部署と協力して業務を進めます。これにより、
企業全体の視点を養うことができます。
3. M&Aの深い理解: 実務を通じてM&Aプロセスを広く・深く理解できます。理論だけでなく、実践的なノウハウを
身につけることができます。
4. 戦略的思考力の向上: 企業の成長戦略を考える中で、戦略的思考力を磨くことができます。
5. 高度な専門性の獲得: 財務、法務、税務など、M&Aに関連する専門知識を習得できます。
6. ネットワークの構築: 社内外の多くの関係者と協働することで、幅広いネットワークを構築できます。
7. キャリアアップの機会: M&A部門での経験は、将来的に経営幹部への道を開く可能性があります。
8. 挑戦的な環境: 常に新しい案件に取り組むため、挑戦的で刺激的な環境で働くことができます。
このように、事業会社のM&A部門でのキャリアは、専門性と総合力を併せ持つ人材へと成長できる魅力的な選択肢といえます。
事業会社のM&A部門における報酬水準は、企業規模や業界、個人の経験や能力によって大きく異なります。一般的な傾向としては以下のようになります。
o 役職や年齢に応じた給与体系が一般的
o 部長クラス:年収1,500万円~2,000万円程度
o 課長クラス:年収1,000万円~1,500万円程度
o 一般社員:年収600万円~1,000万円程度
o 大手企業と比べてやや低めの水準
o 部長クラス:年収1,200万円~1,800万円程度
o 課長クラス:年収800万円~1,200万円程度
o 一般社員:年収500万円~800万円程度
o 前職の報酬水準や実績によって大きく変動
o コンサルティングファームや投資銀行からの転職では、年収がダウンする可能性もある
o 成果に応じたボーナスや報奨金制度を導入している企業もある
o 大型案件の成立などで、通常よりも高額の報酬を得られる可能性がある
o stock option(ストックオプション)や従業員持株制度などの株式関連報酬を提供する企業もある
o 福利厚生や研修制度なども含めた総合的な待遇を考慮する必要がある
重要なのは、単純に金額だけでなく、キャリアの成長性や仕事のやりがい、ワークライフバランスなども含めて総合的に判断することです。また、転職を考える際は、現在の年収と希望する年収を明確にし、転職エージェントなどを通じて市場相場を把握することをおすすめします。
事業会社のM&A部門では、特定のスキルと資質を持つ人材が求められています。以下に、求められる経験・スキルと人物像についてまとめます。
1. 事業会社での実務経験:
o 経営企画部門での経験
o 新規事業開発の経験
o 子会社管理や子会社経営の経験
2. M&A関連の業務経験:
o コンサルティングファームでのM&Aアドバイザリー経験
o 投資銀行でのM&A案件経験
o 事業会社でのM&A実務経験
3. 財務・会計スキル:
o 財務諸表分析能力
o 企業価値評価のスキル
o 投資判断能力
4. 法務知識:
o 会社法や金融商品取引法などの基本的な法律知識
o 契約書作成・レビューのスキル
5. 業界知識:
o 特定業界に関する深い理解
o 業界動向の分析能力
6. 語学力:
o ビジネスレベルの英語力(国際案件の場合)
7. IT・デジタルスキル:
o データ分析能力
o デジタルツールの活用能力
1. コミュニケーション能力:
o 社内外の様々な関係者と円滑にコミュニケーションを取る能力
o 複雑な情報を分かりやすく説明する能力
2. プレゼンテーションスキル:
o 経営陣や取締役会に対して効果的にプレゼンテーションを行う能力
o 説得力のある資料作成能力
3. 論理的思考力:
o 複雑な問題を構造化し、解決策を導き出す能力
o 戦略的な思考力
4. チームワーク力:
o 自立性と協調性のバランスが取れていること
o チームの一員として効果的に働く能力
5. 交渉力:
o ステークホルダーとの調整・交渉能力
o Win-Winの関係を構築する能力
6. リーダーシップ:
o プロジェクトを主導する能力
o チームメンバーを効果的に導く能力
7. 柔軟性と適応力:
o 変化の激しい環境に適応する能力
o 新しい状況や課題に柔軟に対応する能力
8. 高い倫理観:
o コンプライアンスを重視し、誠実に業務を遂行する姿勢
9. 分析力と洞察力:
o 財務データや市場動向を的確に分析する能力
o 将来の事業機会やリスクを予見する能力
10. ストレス耐性:
o プレッシャーの中で冷静に判断し行動する能力
o タイトな締め切りや長時間労働にも対応できる体力と精神力
これらの経験・スキルと資質を兼ね備えた人材が、事業会社のM&A部門で高く評価され、活躍することができます。ただし、すべての要素を完璧に満たす必要はなく、自身の強みを生かしつつ、不足している部分は積極的に学び、成長していく姿勢が重要です。
M&A部門への転職を成功させるための第一のポイントは、十分な事前準備です。
1. 早期からの準備開始:
o M&A部門の募集枠は通常1~2名と限られているため、募集を確認してから準備を始めるのでは遅い場合がありま
す。
o 常に転職市場の動向をチェックし、いつでも応募できる状態を維持しましょう。
2. スキルの棚卸しと強化:
o 自身のスキルと経験を客観的に評価し、強みと弱みを把握します。
o 弱点を補強するため、関連する資格取得や自己学習を進めます。
3. 履歴書・職務経歴書の準備:
o M&A関連の経験や成果を具体的に記載した職務経歴書を用意します。
o 必要に応じて、英語版の履歴書も準備しておきます。
4. 面接対策:
o M&A関連の時事問題や専門知識についての質問に答えられるよう準備します。
o 自身のキャリアビジョンを明確に説明できるようにしておきます。
5. ネットワーキング:
o 業界セミナーや交流会に参加し、人脈を広げます。
o LinkedInなどのプロフェッショナル向けSNSを活用し、自己アピールを行います。
6. スカウトサイトの活用:
o 複数のスカウトサイトに登録し、ヘッドハンターからのアプローチを待ちます。
o プロフィールは定期的に更新し、最新の情報を反映させます。
7. 転職エージェントの選定:
o M&A業界に精通した転職エージェントを複数選び、登録します。
o エージェントとの面談を通じて、市場動向や自身の市場価値を把握します。
転職成功のための第二のポイントは、徹底した情報収集です。
1. 企業研究:
o 志望企業のM&A戦略や過去の案件実績を調査します。
o 企業の財務状況、成長性、業界での位置づけを把握します。
2. 業界動向の分析:
o M&A市場全体の動向や、特定業界のM&A傾向を理解します。
o 最新のM&A関連ニュースやレポートを定期的にチェックします。
3. 組織構造の把握:
o 志望企業のM&A部門の位置づけや規模を調査します。
o 可能であれば、部門の主要メンバーの経歴も確認します。
4. 採用傾向の分析:
o 過去の採用実績や求人情報から、企業が求める人材像を推測します。
o 投資銀行やコンサルティングファーム出身者の在籍状況を確認し、自身のバックグラウンドとのマッチングを
検討します。
5. 社風・文化の理解:
o 企業の理念や価値観を調査し、自身との適合性を確認します。
o 可能であれば、現職・元職員からの口コミ情報も参考にします。
6. 報酬・待遇の確認:
o 業界全体の報酬水準と、志望企業の待遇を比較検討します。
o キャリアアップの可能性や福利厚生なども考慮に入れます。
7. 競合他社の動向:
o 同業他社のM&A戦略や採用状況も把握します。
o 複数の企業にアプローチすることで、選択肢を広げます。
8. 法規制・政策の把握:
o M&Aに関連する法規制や政策の動向を理解します。
o 特に、志望企業が属する業界特有の規制には注意を払います。
これらの準備と情報収集を徹底することで、M&A部門への転職成功の確率を高めることができます。また、面接時にも的確な質問や回答ができ、志望動機をより説得力のあるものにすることができるでしょう。
事業会社のM&A部門は、企業の成長戦略を実現する上で重要な役割を担っています。近年のM&A市場の活況に伴い、人材需要が高まっていますが、募集枠は限られており競争が激しい状況です。M&A部門では、戦略立案から実行、PMIまでの幅広い業務に携わり、高度な専門性と総合力が求められます。転職成功のためには、早期からの準備と徹底した情報収集が重要です。M&A部門でのキャリアは、企業経営の中枢に関わる魅力的な選択肢といえるでしょう。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事