M&A仲介への転職|2026年の選考基準と年収・適性

M&A仲介への転職を考える方向けに、2026年の採用動向、仕事内容、評価される営業経験と財務知識、年収・インセンティブの仕組み、応募先の選び方、面接対策を解説します。高収入という印象だけで判断せず、自分の適性と将来のキャリアを見極めるための情報を整理しました。

目次

  1. M&A仲介の仕事を理解して転職後のずれを防ぐ
  2. 2026年の選考で営業力だけでは足りない理由
  3. 採用担当者に伝えるべき経験とスキル
  4. 応募先は会社の知名度より業務範囲で選ぶ
  5. 書類選考と面接を通過するための準備
  6. 高年収の仕組みと入社後に直面する厳しさ
  7. M&A仲介で築けるキャリアと将来性
  8. まとめ

M&A仲介企業への転職ガイド:必要スキルと業界の将来性 

M&A仲介の仕事を理解して転職後のずれを防ぐ

M&A(合併・買収)仲介の仕事は、会社を譲渡したい経営者と買い手企業の間に立ち、相談から成約までを支援することです。単に相手を紹介して終わる営業ではありません。

会社によって分業の程度は異なりますが、主な業務には、案件の発掘、経営者への提案、決算書の確認、企業価値の検討、候補先の選定、条件交渉、デューデリジェンスへの対応、契約締結までの進行管理があります。

デューデリジェンスとは、買い手企業が対象会社の財務や法務などを詳しく調べる手続です。仲介担当者がすべてを判断するのではなく、公認会計士、税理士、弁護士などと連携しながら案件を進めます。

案件の発掘から成約まで長く伴走する

M&A仲介では、会社売却を検討している経営者を探す営業活動を行います。相談を受けた後は、譲渡の目的や希望条件を整理し、買い手候補を探して面談と交渉を重ねます。

数カ月かけて進めた案件が、条件の不一致や買い手側の事情で成約しないこともあります。短期間の売上だけを追う仕事ではなく、複数の案件を管理しながら粘り強く関係を築く力が必要です。

経営者の人生に関わる責任がある

中小企業のM&Aでは、譲渡価格だけでなく、従業員の雇用、取引先との関係、借入金、経営者保証なども重要な論点になります。経営者が長年育てた会社を誰に託すかという判断に関わるため、誠実な説明と秘密情報の管理が欠かせません。

経営層へ直接価値を提供できる点は、この仕事の大きな魅力です。一方で、自分の説明や対応が取引の行方を左右する重さもあります。

2026年の選考で営業力だけでは足りない理由

日本企業が関係するM&Aは、2025年に5,115件となり、2026年1月から6月も2,647件と前年同期を上回りました。後継者問題に加え、成長投資や業界再編を目的とする取引もあり、M&A人材が必要とされる状況は続いています。

ただし、市場が広がれば、採用人数が無条件に増えるわけではありません。案件が複雑になるほど、行動量だけでなく、経営者の話を整理する力、決算書を読む基礎、条件を論理的に説明する力が求められます。

以前よりも、営業の勢いや行動量だけでは評価されにくくなっています。営業力、論理的思考、財務知識を組み合わせて発揮できるかが、選考の分かれ目になります。

若手未経験者にも応募の機会はある

20代から30代前半を中心に、金融、人材、IT、メーカーなどの異業界から採用する会社があります。入社後に会計、税務、法務、M&A実務を学ぶ研修を設けている会社もあり、未経験であることだけを理由に諦める必要はありません。

ただし、未経験者には「短期間で専門知識を身につけられるか」が厳しく見られます。前職の成果に加え、簿記の学習状況やM&Aの基礎理解を示すことが大切です。

営業力、地頭、財務知識の3軸で見られる

営業力とは、経営者との接点を作り、信頼関係を築く力です。地頭とは、複雑な情報を整理し、相手に分かる形で説明する力を指します。財務知識は、決算書から会社の収益力や借入金などを読み取るための基礎です。

どれか1つだけでは不十分になりやすい仕事です。営業成績が高くても数字への苦手意識が強い場合や、会計に詳しくても経営者と対話できない場合は、選考で懸念を持たれることがあります。

採用担当者に伝えるべき経験とスキル

「営業を頑張りました」だけでは、実力は伝わりません。採用担当者が知りたいのは、別の環境でも成果を再現できるかです。

営業実績は再現できる理由まで説明する

職務経歴書では、目標達成率、社内順位、担当顧客数、受注単価などを使って成果を数値化します。社内上位3〜5%に入った実績などがあれば強い材料になりますが、順位だけで終わらせないことが重要です。

金融機関や証券会社での法人営業、無形商材や高額サービスの提案など、難しい顧客を相手に成果を出した経験は評価されやすい傾向があります。ただし、出身企業の知名度より、何を考えて成果を出したかが重要です。

結果を生んだ行動を分解する

どの顧客を狙い、どのような仮説を立て、何を変え、どの程度行動したのかを説明します。偶然ではなく、自分の工夫で成果を出したことが伝われば、M&A仲介でも同じ考え方を使えると評価されやすくなります。

面接では課題から結果まで順番に話す

課題、仮説、行動、結果、学んだことの順で話すと、営業力と論理的思考を同時に示せます。数字を並べるだけでなく、失敗後に行動を修正した経験も用意しておくとよいでしょう。

経営者との折衝経験を具体化する

M&A仲介で向き合う相手は、会社の最高意思決定者であるオーナー経営者です。法人営業、融資、証券、人材紹介、コンサルティングなどで、経営者や役員と直接交渉した経験は評価材料になります。

重要なのは、「経営者の懐に入れる」という抽象的な表現ではありません。意見が対立した場面で何を聞き、どのように懸念を整理し、合意まで進めたかを説明します。

簿記は資格の有無より使える知識が大切

M&A仲介への転職に、公認会計士や税理士などの資格が必須というわけではありません。ただし、日商簿記2級程度の知識があれば、決算書を学ぶ土台として役立ちます。

資格を取得していなくても、学習を始めていることには意味があります。「いつまでにどの範囲を学ぶか」を説明できれば、学習意欲と計画性を示せます。応募を資格取得まで先延ばしにせず、転職活動と勉強を並行する方法も現実的です。

応募先は会社の知名度より業務範囲で選ぶ

M&A仲介会社には、大手上場会社系、独立した非上場会社系、少人数のブティック型、医療・介護などの業界特化型があります。業務システムを活用し、買い手候補の探索や資料作成を効率化する会社もあります。

有名企業であることだけを理由に選ぶと、転職後に仕事の進め方が合わないことがあります。応募前に、自分が担当する範囲と評価方法を確認してください。

一気通貫型か分業型かを確認する

一気通貫型では、案件発掘から成約まで1人の担当者が広く関わります。営業力だけでなく、決算書の確認、資料作成、交渉、進行管理まで経験しやすい点が特徴です。

分業型では、売り手担当、買い手担当、企業価値算定、契約実務などを専門部署が担当します。各業務を学びやすい一方、自分が経験できる範囲が限られる場合もあります。

報酬率だけでなく成約できる環境を見る

インセンティブ率が高くても、案件の供給、専門部署の支援、上司の同行、研修が不足していれば成果を出しにくくなります。最低手数料が高い会社では、小規模案件を成約しにくいこともあります。

面接では、入社後の研修期間、案件の獲得方法、1人当たりの担当数、専門家との連携、評価期間を確認します。高い報酬率だけで決めないこと。意外と多い落とし穴です。

書類選考と面接を通過するための準備

内定を分けるのは、経歴の華やかさだけではありません。同じ経験でも、準備の深さによって伝わり方は変わります。

職務経歴書は成果と再現性を1組にする

職務経歴書では、成果の数字と、その数字を作った行動をセットで書きます。担当エリアや勤務先の知名度に恵まれただけと思われないように、自分の工夫を明確にしてください。

志望動機は「高年収だから」「経営者と仕事ができるから」だけでは弱くなります。なぜM&Aなのか、なぜ仲介なのか、なぜその会社の業務体制なのかを分けて整理します。

面接前に押さえる基礎知識

少なくとも、決算書の基本、株式譲渡と事業譲渡の違い、企業価値評価の考え方、デューデリジェンスの目的は、自分の言葉で説明できるようにします。

会社によっては、適性検査、複数回の面接、経営者との面談を想定したロールプレイ、簡単なケース質問が行われます。知らない質問に対しても、前提を確認し、考え方を順番に話す姿勢が大切です。

転職エージェントは情報の深さで選ぶ

M&A業界に詳しい転職エージェントは、各社の選考傾向、報酬制度、担当業務の違いを知る手段になります。ただし、業界特化を掲げているだけで選ばず、求人票にない実態を具体的に説明できるかを確認してください。

面接回答を丸暗記すると、追加質問に対応できません。助言を参考にしながら、自分の経験と言葉へ置き換えることが必要です。

高年収の仕組みと入社後に直面する厳しさ

M&A仲介では、固定給に成約実績に応じたインセンティブを加える報酬設計が一般的です。一部の大手上場会社では、想定初年度年収を500万〜1,200万円とし、成果例として年収2,000万円台から6,000万円台を公表しています。インセンティブに上限を設けない会社もあります。

ただし、これは入社すれば自動的に得られる年収ではありません。成約できない期間は固定給が中心となり、期待した収入に届かない可能性があります。

収入の上振れと下振れを同時に考える

大型案件を成約すれば年収が大きく増える一方、案件が破談になれば、それまでの活動がすぐには報酬につながりません。成果が出るまでの生活費や貯蓄も含め、転職前に収入の下振れを想定しておく必要があります。

成果へのプレッシャーと多忙な働き方

新規開拓、経営者との面談、資料作成、買い手探索、条件交渉、出張が重なると、多忙になりやすい仕事です。案件の終盤では、関係者から急な確認を求められることもあります。

転職時には、固定給、インセンティブの発生条件、固定残業時間、休日、案件配分を求人票と雇用条件通知書で確認してください。会社ごとの差が大きいため、業界全体の評判だけで判断しないことが大切です。

M&A仲介で築けるキャリアと将来性

M&A仲介で身につくのは、経営者向けの営業力だけではありません。決算書の分析、企業価値評価、交渉、契約までの進行管理、業界調査を横断して経験できます。

転職後の進路としては、同業でより大きな案件を担当するほか、FA、FAS、経営コンサルティング、事業会社のM&A部門、PMI(M&A後の統合プロセス)などがあります。FAは一方の当事者を支援する立場、FASは財務面を中心にM&Aを支援する専門サービスです。

M&A支援機関登録制度には、2026年2月20日時点で3,235件のFA・仲介業者が登録されています。参入する会社や人材が増えるなか、今後は営業件数だけでなく、倫理、説明力、財務知識、特定業界への理解を備えた人材ほど評価されやすくなるでしょう。

転職の目的を高年収だけに置かず、どの専門性を身につけたいのかまで考えておくと、最初の応募先を選びやすくなります。

まとめ

M&A仲介への転職では、高年収という印象だけでなく、案件発掘から成約までの業務、収入の振れ幅、経営者の人生に関わる責任まで理解する必要があります。選考では、再現性のある営業実績、経営者との折衝力、決算書を読む基礎が重要です。応募先ごとの分業体制や評価制度を比べ、自分が学び続けながら成果を出せる環境かを見極めてください。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人