M&A手数料は誰が負担する?費用発生のタイミング、計算方法を解説

多くの中小企業が後継者不足に悩む今、m&a仲介は円滑な事業承継や企業成長の有力な手段です。本記事ではm&a仲介の業務内容、FA・士業との違い、手数料の仕組み、利益相反問題などを詳しく解説し、成功へのポイントを示します。M&A仲介会社を選ぶ際の留意点やメリット・デメリットも紹介し、スムーズな手続を進めるための知識を提供します。

目次

1. M&Aの手数料の基本概要
2. M&A手数料の種類とタイミング
3. M&A仲介会社の形態と費用負担の違い
4. 仲介会社を選ぶ際の注意点・比較ポイント
5. 仲介手数料を抑えるためのポイント
6. まとめ

1. M&Aの手数料の基本概要

M&A手数料は売り手・買い手の双方に発生する

一般的に売り手と買い手がそれぞれ負担する。仲介形態(両手・片手)や契約形態によって変わる。


M&A手数料の全体相場

一般的には取引金額の4~5%前後とされるが、具体的な割合は以下で紹介する「レーマン方式」や最低報酬額設定の有無等によって変動する。


M&A手数料は複数の種類がある

相談料、着手金、中間金、成功報酬、月額顧問料(リテイナーフィー)など。M&A仲介会社によって「無料のもの」「必ず請求されるもの」が異なる。

2. M&A手数料の種類とタイミング

2-1. 相談料

概要

依頼前の初期相談に発生する費用。

相場

無料が主流だが、数千円〜1万円程度請求されるケースもごくまれに存在。

注意点

着手金が発生するかどうかなどを含め、事前に確認をすると安心。

2-2. 着手金

概要

FA(アドバイザー)契約締結後、本格的に業務を開始する際に支払う費用。

相場

50万円〜500万円程度と幅がある。近年は無料化の動きもあるが、全て無料にするのは難しいケースが多い。

特徴

M&Aの成否にかかわらず返金されない。少額でも設定されている場合があるため、契約前に必ずチェック。

2-3. 中間金(中間報酬)

概要

買い手と基本合意契約を結んだ段階で発生。

相場

成功報酬の一部(10〜50%)や固定で数十〜数百万円など、各社の設定により異なる。

特徴

基本合意後にM&Aが破談になっても返金されないことが多い。中間金を設けていない仲介会社もある。

2-4. 成功報酬

概要

M&Aが最終的に成立(最終契約締結)した際に支払う報酬。

相場

一般的にはレーマン方式を採用。多くの仲介会社で最低報酬(例:1,000万〜2,000万円)を設定している。

特徴(完全成功報酬型との違い)

  • 通常の成功報酬: 着手金や中間金等が別途発生する場合あり。
  • 完全成功報酬制: 成約まで原則費用が発生しない(ただし買い手側に中間金がかかるなど例外パターンあり)。


レーマン方式の計算例(一般的な料率の場合)

成約金額            手数料率

5億円以下の部分          5%

5億円超〜10億円以下の部分    4%

10億円超〜50億円以下の部分  3%

50億円超〜100億円以下の部分  2%

100億円超の部分         1%


例:成約金額が18億円の場合

  • 5億円 × 5% = 2,500万円(a)
  • 5億円 × 4% = 2,000万円(b)
  • 8億円 × 3% = 2,400万円(c)

合計(a + b + c)= 6,900万円(税別)

2-5. 月額顧問料(リテイナーフィー)

概要

仲介会社が顧問として関与する際の定額報酬。

相場

月額数万円〜数十万円程度。無料としている仲介会社も多い。

注意点

成約まで支払い続ける必要があるため、総額が高くなるリスクあり。

2-6. デューデリジェンス費用

概要

買い手が対象企業を詳細に調査するために弁護士や会計士、税理士へ支払う費用。

相場

50万円〜数百万円程度と企業規模・調査範囲によって幅広い。

負担者

一般的には買い手側が負担。ただし、契約内容によって変わる場合も。


2-7. その他(実費など)

概要

出張費・専門家との相談費用・文書作成費など。

相場

各社の報酬形態により「実費を別途請求」「着手金や月額報酬に含む」などケースバイケース。

3. M&A仲介会社の形態と費用負担の違い

3-1. 両手取引

概要

1社の仲介会社が売り手・買い手の双方と契約し、両者から手数料を受け取る。

メリット

  • 両者の調整が一本化されるため、成約までの交渉がまとまりやすい。
  • 手数料も双方で分担する形になりやすい。

デメリット

  • 利益相反リスク(買い手を優先しすぎるなど)が起きやすい。
  • 売り手は一度きりのM&Aが多いが、買い手はリピート利用しやすく、結果として買い手優位になりやすい。

3-2. 片手取引(FA契約)

概要

売り手または買い手の「どちらか一方」と専属で契約し、手数料を受け取る。

メリット

  • 顧客(依頼主)の利益最大化に専念しやすい。
  • 複数の専門家・ネットワークを活用して幅広く相手企業を探せる。

デメリット

  • 手数料は片方が全額を負担するため、両手より割高になりやすい。
  • 交渉の主張が平行線になりやすく、成立に時間がかかる場合がある。

4. 仲介会社を選ぶ際の注意点・比較ポイント

実績と専門性

業種に応じた豊富な事例を持つか、専門家(税理士・会計士・弁護士)との連携体制は十分か。


料金体系(成功報酬型 or 完全成功報酬型 etc.)

レーマン方式の対象金額、最低報酬額、中間金や着手金の有無を確認。


利益相反リスクの説明や対策

両手契約の場合、利益相反を回避する仕組みが整っているか。

担当者との相性

M&Aプロセスは長期にわたるため、担当者が親身に取り組み、経営方針を理解してくれるかは重要。


ポイント

「手数料が安い」だけで決めるのではなく、専門知識・経験・サポート体制と合わせて比較検討するのがおすすめ。

5. 仲介手数料を抑えるためのポイント

着手金や月額顧問料が不要な仲介会社を探す

初期費用を抑えたい場合は、完全成功報酬型の選択肢も有力。


複数社に見積もり・説明を依頼し比較検討する

レーマン方式の基準額や料率、適用範囲(負債を含むか否か)などで大きく金額が変わる。


追加費用や実費の請求ルールを確認する

デューデリジェンス費用や出張費が別途発生しないかを事前に要チェック。

6. まとめ

M&A手数料には多種多様な項目と計算方式が存在し、仲介会社によって費用やタイミングは大きく異なるのが特徴です。


  • 「レーマン方式の料率」「最低報酬の設定」「着手金や中間金の有無」などをよく確認し、自社のニーズにあった仲介会社を選ぶことが重要です。
  • また、信頼できる仲介会社・アドバイザーを見極めるためには、M&A実績や専門家との連携体制、担当者の経験も含めて総合的に判断すると安心です。

本記事のポイントを参考に、適切な費用感やサポート体制を持つ仲介会社を選んでM&Aを成功に導いてください。

著者|竹川 満  マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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