最新のM&A売上高ランキングと大手3社の特徴を紹介。M&A仲介会社選びの重要ポイントや注意点を解説し、成功するM&Aのための仲介会社の選び方をわかりやすく解説します。
目次
M&A仲介とは、企業の合併・買収(M&A)取引において、売り手企業と買い手企業の間に立ち、取引の成立をサポートする専門家や企業のことを指します。M&A仲介会社は、取引全体を通じて中立的な立場を保ちながら、両者の交渉をサポートします。
主な役割には以下のようなものがあります:
1. 取引のマッチング:適切な売り手企業と買い手企業を見つけ、紹介します。
2. 交渉の支援:両者の利害を調整し、円滑な交渉をサポートします。
3. 企業価値評価:対象企業の適正な価値を算定し、取引価格の決定を支援します。
4. デューデリジェンス(企業調査)の実施:財務、法務、事業などの観点から対象企業の調査を行います。
5. 契約書作成の支援:M&A契約書の作成をサポートします。
M&A仲介会社は、これらの専門的なサービスを提供することで、M&A取引の成功確率を高め、スムーズな事業承継や企業成長を実現する重要な役割を果たしています。
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日本のM&A仲介業界では、大手3社が売上高の上位を占めています。ここでは、これらの会社について、売上高の大きい順に詳しく見ていきましょう。
日本M&Aセンターは、1994年4月に設立された業界のリーディングカンパニーです。2021年3月末時点で東証一部に上場しており、現在は東証プライム市場に所属しています。
主な特徴:
• 国内の中堅中小企業を中心にサービスを提供
• 案件ごとに企業の課題を分析し、最適なサポートを提供
• 金融機関や会計事務所などの広範なネットワークを活用
M&Aキャピタルパートナーズは、2005年10月に設立された比較的新しい企業ですが、急速に成長を遂げています。東証一部上場企業で、現在は東証プライム市場に所属しています。
主な特徴:
• M&A仲介事業に加え、M&Aアドバイザリー業務も展開
• 連結子会社のレコフデータ社を通じてM&Aデータベース事業やメディア運営を実施
• 総合的なM&A関連サポート体制が充実
ストライクは、1997年7月に設立され、公認会計士などの専門知識を持つスタッフが多数在籍している点が特徴です。東証一部上場企業で、現在は東証プライム市場に所属しています。
主な特徴:
• 中堅中小企業をメインターゲットとしたサービス提供
• インターネットを活用したマッチングサイト「M&A市場SMART」を運営
• 公認会計士などの専門家による高度な知識とサポート
これら3社は、いずれも上場企業として高い信頼性と実績を持ち、M&A仲介業界をリードする存在となっています。
大手M&A仲介会社3社(日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク)には、それぞれ特徴がありますが、ここでは主に売上高・経常利益と成約件数の観点から比較してみましょう。
3社の売上高と経常利益を比較すると、以下のようになります:
日本M&Aセンター |
413億円(2023年3月期) |
154億円(2023年3月期) |
M&Aキャピタルパートナーズ |
207億円(2022年9月期) |
97.7億円(2022年9月期) |
ストライク |
138億円(2023年9月期) |
52.1億円(2023年9月期) |
これらの数字から、日本M&Aセンターが売上高、経常利益ともに他の2社を大きく引き離していることがわかります。しかし、3社ともに増収増益傾向にあり、M&A市場の拡大とともに成長を続けていると言えます。
各社のM&A成約件数は以下の通りです:
日本M&Aセンター |
1,050件(2022年度)※ |
M&Aキャピタルパートナーズ |
199件(2022年度)※ |
ストライク |
408件(2023年9月期)※ |
※注意点:日本M&Aセンターのみ、売り手・買い手をそれぞれ1件とカウントしています。他の2社は譲渡成約を1件とカウントしているため、単純な比較はできません。
成約件数においても、3社とも増加傾向にあり、M&A市場の活況を反映しています。特に日本M&Aセンターの成約件数の多さが際立っていますが、カウント方法の違いを考慮する必要があります。
これらの比較から、3社はそれぞれ強みを持ちながら成長を続けていることがわかります。しかし、数字だけでなく、各社のサービス内容や対応力なども考慮して選択することが重要です。
大手M&A仲介会社を利用する際には、いくつかの明確なメリットがあります。以下に主なメリットをご紹介します。
1. 安心感と信頼性 大手M&A仲介会社は、上場企業としての信頼性や長年の実績があるため、初めてM&Aを検討する
経営者にとって大きな安心感があります。
2. 豊富な経験と実績 多数の案件を手がけてきた経験から、様々な状況に対応できるノウハウを有しています。これに
より、スムーズな交渉や適切なアドバイスが期待できます。
3. 幅広いネットワーク 大手企業は、金融機関や会計事務所、法律事務所などと強固なネットワークを持っています。
このネットワークを活用することで、より多くの買い手候補にアプローチできる可能性があります。
4. 充実したサポート体制 専門的な知識を持つスタッフが多数在籍しており、財務、法務、税務など多角的な視点から
サポートを受けられます。
5. 情報管理の徹底 上場企業としての厳格な情報管理体制があり、機密情報の漏洩リスクが低減されます。
6. ブランド力 大手企業のブランド力は、取引相手に対する信頼性向上につながり、交渉を有利に進める可能性があり
ます。
7. 多様なサービス M&A仲介だけでなく、企業価値評価、デューデリジェンス支援、PMI(買収後の統合)支援など、
幅広いサービスを一貫して提供できることが多いです。
これらのメリットは、M&Aという複雑で重要な取引を進める上で、大きな安心材料となります。しかし、大手企業を選ぶ際にも、自社のニーズや案件の特性に合わせて慎重に検討することが重要です。
大手M&A仲介会社を利用する際には、メリットだけでなく、いくつかの注意点も考慮する必要があります。以下に主な注意点を詳しく説明します。
大手M&A仲介会社の手数料は、中小規模の仲介会社と比較して高額になる傾向があります。その理由としては以下が挙げられます:
1. 成約時の成功報酬が高い
2. 着手金や中間金など、途中段階での費用が発生することがある
3. 最低手数料の設定が高めである場合が多い
例えば、完全成功報酬制を謳っている会社でも、最低手数料を下げることに消極的な場合があります。このため、特に小規模なM&A案件の場合、手数料が相対的に高くなる可能性があります。
上場している大手M&A仲介会社には、以下のような課題が存在する可能性があります:
1. 短期的な利益追求
o 一般株主を意識するあまり、短期的な利益を重視する傾向がある
o 顧客の長期的な利益よりも、自社の業績向上を優先する可能性がある
2. 最適なマッチングへの消極性
o 売却を急ぐあまり、本当に最適な買い手を探すことなく、「買いやすい相手」に売却を進める傾向がある
o 経営者の真の意向や心情に十分寄り添えない可能性がある
3. 案件の優先順位付け
o 1人の担当コンサルタントが多数の案件を抱えているケースが多い
o 結果として、案件に優先順位をつけてしまい、一部の案件が放置されるリスクがある
4. 画一的なアプローチ
o 標準化されたプロセスを重視するあまり、個々の案件の特性や顧客のニーズに柔軟に対応できない場合がある
5. コミュニケーションの不足
o 大規模な組織であるがゆえに、顧客とのきめ細かなコミュニケーションが不足する可能性がある
これらの注意点は、必ずしもすべての大手M&A仲介会社に当てはまるわけではありませんが、サービスを利用する際には十分に考慮する必要があります。M&Aは企業にとって非常に重要な意思決定であるため、仲介会社の選択には慎重を期すべきです。
自社のニーズや案件の特性を十分に理解し、それに合った仲介会社を選ぶことが重要です。場合によっては、大手だけでなく、専門性の高い中小規模の仲介会社も選択肢に入れて検討することをおすすめします。
M&A仲介会社を選ぶ際には、自社のニーズに合った最適な会社を選択することが重要です。以下に、M&A仲介会社を選ぶ際の重要なポイントを詳しく解説します。
M&A仲介会社によって、得意とする取引規模、業種、地域が異なります。以下の点を確認しましょう:
1. 取引規模:自社の企業規模や想定される取引金額に適した実績があるか
2. 業種:自社の業界に精通しているか、類似の案件を手がけた経験があるか
3. 地域:地方企業の場合、その地域の経済事情に詳しいか
大手M&A仲介会社は幅広い案件に対応できますが、特定の分野に強みを持つ中小規模の仲介会社も考慮に入れると良いでしょう。
過去の実績は、仲介会社の信頼性を判断する重要な要素です。以下の点を確認しましょう:
1. 成約件数:年間の成約件数や累計成約件数
2. 類似案件の実績:自社と似た規模や業種の案件実績
3. 成功事例:具体的な成功事例の内容と数
これらの情報は、多くの場合、企業のウェブサイトや資料で確認できます。
M&A仲介の手数料体系は会社によって異なります。以下の点を確認しましょう:
1. 成功報酬の料率:一般的に取引金額の1~5%程度
2. 着手金や中間金の有無:途中段階での費用発生の有無
3. 最低手数料:小規模案件の場合、最低手数料が高すぎないか
複数の会社の見積もりを比較し、サービス内容と照らし合わせて適正かどうか判断することが重要です。
M&Aには多岐にわたる専門知識が必要です。以下の専門家が在籍しているか確認しましょう:
1. 公認会計士:財務デューデリジェンス、企業価値評価
2. 弁護士:法務デューデリジェンス、契約書作成
3. 税理士:税務デューデリジェンス、税務戦略立案
4. 経営コンサルタント:事業デューデリジェンス、PMI支援
専門家が社内に在籍していない場合でも、外部の専門家と連携できる体制があるかどうかを確認することが重要です。
M&Aに関する情報は極めて機密性が高いため、仲介会社の情報管理体制は非常に重要です。以下の点を確認しましょう:
1. 情報セキュリティポリシーの有無
2. 従業員の守秘義務契約
3. 物理的なセキュリティ対策(入退室管理など)
4. データ管理システムのセキュリティ
情報漏洩は企業価値に大きな影響を与える可能性があるため、厳格な管理体制を持つ仲介会社を選ぶことが重要です。
これらのポイントを総合的に検討し、自社のニーズに最も適したM&A仲介会社を選択することで、M&Aの成功確率を高めることができます。また、複数の仲介会社と面談し、相性や信頼性を直接確認することも推奨されます。
M&A仲介会社を選ぶ際は、自社の規模や業種、地域性に合わせて適切な選択をすることが重要です。大手M&A仲介会社には豊富な実績や幅広いネットワークというメリットがある一方で、高額な手数料や真の顧客志向の欠如といったデメリットも存在します。適切な仲介会社を選ぶためには、取引規模・業種・地域の専門性、過去の実績、手数料の適正さ、専門家の在籍状況、情報管理体制などを総合的に評価することが必要です。専門性の高い仲介会社を選択することで、より成功確率の高いM&Aを実現できる可能性が高まります。
著者|土屋 賢治 マネージャー
大手住宅メーカーにて用地の取得・開発業務、法人営業に従事。その後、総合商社の鉄鋼部門にて国内外の流通に携わる傍ら、鉄鋼メーカーの事業再生に携わる。外資系大手金融機関を経て、みつきグループに参画