M&A仲介売上ランキングで分かる中小企業の会社売却先選び
M&A仲介の売上ランキングを直近決算ベースで整理し、大手各社の収益モデル、手数料、利益相反、担当体制の見方を解説します。会社売却で自社に合う相談先を選ぶ判断軸も押さえましょう。
目次

▶目次ページ:M&Aの相談先(M&A仲介/コンサルタント)
M&A仲介会社を探すとき、売上高ランキングは分かりやすい目安になります。売上が大きい会社は、成約件数、案件単価、営業体制、知名度のいずれかに強みを持っていることが多いためです。
ただし、会社売却を考える経営者にとって大切なのは「売上1位の会社に頼むこと」ではありません。自社の業種、地域、譲渡価格、株主構成、従業員への配慮、税務上の論点に合う支援を受けられるかです。ここを取り違えると、相談先選びで判断が止まることがあります。
売上高は、M&A(合併・買収)仲介会社がどれだけ報酬を得たかを示す数字です。M&A仲介では、成約時の成功報酬が主な収益源になります。そのため、売上が大きい会社は、成約件数が多い、1件あたりの手数料が高い、またはその両方である可能性があります。
売上は信頼性の手掛かりになります。多くの案件を扱う会社には、買い手候補の情報、価格交渉の経験、契約実務の型が蓄積されやすいからです。特に初めて会社売却を検討する経営者にとって、実績のある会社へ相談する安心感は小さくありません。
一方で、売上高だけでは担当者の力量、自社への向き合い方、手数料の妥当性、買い手候補の質までは分かりません。高い売上は「多くの案件を成約している」証拠にはなっても、「自社に最適な買い手を探してくれる」保証にはならないためです。
また、各社で決算期、会計基準、成約件数の数え方が異なります。譲渡側と譲受側を別々に数える会社もあれば、1組の成約を1件とする会社もあります。単純に件数だけを横並びで比べると、実態を読み違えることがあります。
M&A仲介業界では、従来から大手とされてきた日本M&AセンターHD、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライクに、急成長したM&A総合研究所グループを加えた4社が、上位層として意識されることが増えています。M&A総合研究所を展開する持株会社は、現在はクオンツ総研HDです。
直近の通期決算ベースでは、日本M&AセンターHDが首位で、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、クオンツ総研HD系が上位に続く構図です。ただし、決算期や事業範囲が異なるため、ランキングは「相談先を探す入口」として見るのが適切です。非上場会社やM&A専業でない会社もあり、5位以降を単純な売上順で断定することは難しい面があります。
|
日本M&Aセンター |
売上502億円(2026年3月期) |
経常利益191億円 |
|
M&Aキャピタルパートナーズ |
売上224億円(2025年9月期) |
経常利益78.7億円 |
|
ストライク |
売上144億円(2025年9月期) |
経常利益84億円 |
日本M&AセンターHDは、地方銀行、信用金庫、会計事務所などとの広いネットワークを背景に、多数の中堅・中小企業案件を扱う会社です。1件あたりの手数料単価だけでなく、案件数の積み上げで売上をつくる規模型の色合いがあります。
経営者側から見ると、買い手候補を広く探しやすい点は利点です。地方企業や後継者不在企業では、地元の金融機関や士業経由で買い手情報が集まることもあります。ただし、案件数が多い会社ほど、担当者の対応密度や報告頻度を確認することが重要になります。
M&Aキャピタルパートナーズは、直接提案型の営業や大型案件への対応で知られています。成約件数だけでなく、1件あたりの報酬単価が高い案件を取り込むことで、少ない件数でも大きな売上につながりやすいモデルです。
高単価案件に強い会社は、一定規模以上の会社売却では力を発揮しやすいです。買い手候補の経営層へ直接提案する力や、価格交渉の進め方が重要になるためです。一方で、小規模な譲渡では最低報酬や中間報酬の負担感が大きくなることがあります。
ストライクは、公認会計士など会計に強い人材を背景に、財務面を踏まえた提案やオンラインマッチングの仕組みに特徴があります。決算書の読み解き、収益力の説明、買い手への事業価値の伝え方に専門性が求められる会社では、相性を確認しやすい会社です。
M&Aでは、売却価格だけでなく、正常収益力、役員報酬、役員退職金、不要資産、借入金、簿外債務などの整理が必要になります。会計的な論点を早い段階で整理できると、買い手との交渉で説明がしやすくなります。
クオンツ総研HD系は、旧M&A総研HD時代から、AIやDXを活用したマッチング、効率的な案件管理、売り手側の初期費用を抑えた報酬設計などを打ち出し、短期間で存在感を高めました。現在は商号変更や事業領域の拡大も進んでおり、M&A仲介を中心としながら周辺事業も広げています。
デジタル活用に強い会社は、買い手候補の抽出や進捗管理が速い場合があります。ただし、スピードが速いほど、経営者の希望条件、従業員への説明時期、取引先への影響を丁寧に確認する必要があります。早い成約が、常に良い成約とは限りません。
売上上位のM&A仲介会社には、一定の安心感があります。会社を売却する話は、従業員、取引先、金融機関、家族にも影響します。経営者が「誰に話すべきか」で迷うのは当然です。
売上上位会社の利点は、主に買い手候補の数、案件管理の型、情報管理体制、専門家との連携にあります。すべての会社に当てはまるわけではありませんが、初回相談で確認すべき方向性は見えやすくなります。
会社売却では、最初に接触した買い手が最適とは限りません。複数の買い手候補を比較できると、譲渡価格、雇用維持、商号の継続、取引先対応、経営者の退任時期など、条件面で選択肢を持ちやすくなります。
売上上位の会社は、過去の案件データ、買収ニーズ、提携先の情報を多く持つ傾向があります。特定業種の買い手候補を探すときも、過去の接点をもとに提案が進むことがあります。
M&Aでは、秘密保持契約、企業概要書の作成、買い手候補への打診、トップ面談、基本合意、デューデリジェンス、最終契約、クロージングという流れで進むのが一般的です。デューデリジェンスとは、買い手が会社の財務、税務、法務、労務などを調べる手続です。
大手はこの流れを標準化しているため、初めて売却する経営者でも次に何をすべきか把握しやすくなります。手続が見えるだけで、不安はかなり減ります。
上場会社系の仲介会社は、投資家向けの開示資料やコーポレートガバナンス情報を確認しやすいという利点があります。情報管理、内部統制、コンプライアンスへの姿勢を外部から見やすい点は、会社売却を任せるうえで安心材料になります。
ただし、開示資料が整っていることと、現場担当者が丁寧に対応してくれることは別です。相談時には、守秘義務契約の締結時期、匿名での打診範囲、資料閲覧の管理方法、買い手候補への情報開示の順番を具体的に確認しましょう。
売上上位会社には強みがありますが、大手であれば必ず自社に合うわけではありません。意外と多い落とし穴です。
特に中小企業の会社売却では、売却価格だけでなく、手取り額、役員退職金、個人保証、従業員の雇用、取引先への説明、金融機関対応まで含めて判断する必要があります。売上ランキングだけで選ぶと、こうした細かな事情が後回しになることがあります。
M&A仲介の報酬は、一般にレーマン方式を基礎に計算されます。レーマン方式とは、譲渡価格など一定の基準額に料率をかけて報酬を計算する方法です。
注意したいのは、基準額が何かです。株式価値を基準にするのか、移動総資産を基準にするのか、役員借入金や有利子負債を含めるのかで、報酬額は変わります。最低手数料が設定されている場合、譲渡価格が小さい案件ほど負担割合が高くなります。
「成功報酬」と聞くと、成約時だけ費用が発生するように感じます。しかし実際には、着手金、中間金、月額報酬、企業価値算定費用が別に発生することがあります。無料相談の段階で、成約しなかった場合の費用、基本合意で発生する費用、撤退時の扱いを確認しましょう。
M&A仲介会社の売上構造には違いがあります。大型案件を中心に1件あたりの単価を高める会社もあれば、金融機関や会計事務所とのネットワークを活用し、件数で売上を積み上げる会社もあります。
高単価モデルでは、一定規模以上の案件で手厚い交渉支援を受けやすい反面、小規模案件では優先度が下がる可能性があります。件数モデルでは、多くの候補先へ接触できる反面、担当者が抱える案件数が多くなり、経営者が期待するほど細かな報告を受けられない場合があります。
M&A仲介会社は、通常、成約して初めて大きな報酬を得ます。そのため、会社によっては「本当に最適な買い手を探す」よりも「成約しやすい買い手へ早く進める」力学が働くことがあります。
もちろん、すべての会社がそうではありません。ただ、経営者は自社の優先順位を明確に伝える必要があります。価格を最優先するのか、従業員の雇用を重視するのか、社名や拠点を残したいのかで、探すべき買い手は変わります。
仲介は、売り手と買い手の間に立つ立場です。双方から報酬を受け取る場合、どちらの利益をどこまで優先するのかが分かりにくくなります。これを利益相反といいます。
中小企業M&Aの実務では、手数料、支援内容、利益相反、最終契約のリスクなどを事前に確認することが重要です。相談時には、買い手側からも報酬を受け取るのか、買い手候補の選定基準は何か、自社に不利な条件が出たときにどう助言するのかを確認しましょう。
会社売却では、売上ランキング上位だけでなく、複数タイプの相談先を比較することが大切です。上場会社系、非上場会社系、会計事務所系・士業系では、得意分野や支援姿勢が異なります。
M&A仲介会社には、上場会社系、非上場会社系、会計事務所系・士業系があります。みつきコンサルティングは、税理士法人を母体とする会計事務所系・士業系の代表的なM&A仲介会社であり、税務・会計面を含めた譲渡スキーム検討の比較軸になります。
相談先を選ぶ前に、自社が何を実現したいのかを整理します。後継者不在の解決、創業者利益の確保、従業員の雇用維持、取引先への供給責任、成長資金の確保など、目的は会社ごとに違います。
目的が曖昧なまま相談すると、仲介会社の提案に流されやすくなります。価格だけを見て進めた結果、従業員の処遇や経営者保証の解除でつまずくケースもあります。
会社売却では、譲渡価格と手取り額は一致しません。株式譲渡であれば、株主に対する譲渡所得税などを考える必要があります。事業譲渡であれば、法人税、消費税、資産・負債の移転、従業員契約の引継ぎなども関係します。
経営者が知りたいのは「いくらで売れるか」だけではありません。「税金と手数料を払った後、いくら残るか」です。ここを説明できる相談先かどうかは、かなり重要です。
中小企業M&Aでは、株式譲渡が多く使われます。株式譲渡とは、会社の株式を買い手に渡し、会社そのものを引き継ぐ方法です。一方、事業譲渡は、事業の一部または全部を資産や契約単位で移す方法です。
どちらが適するかは、負債、許認可、不要資産、株主構成、税務負担によって変わります。売上ランキングだけでは、この判断はできません。
M&A実務では、専門用語が多く出てきます。基本合意、表明保証、クロージング、アーンアウト、デューデリジェンスなどです。担当者が難しい言葉をそのまま使うだけでは、経営者は判断できません。
初回面談では、担当者に「当社の場合、何が一番の論点になりますか」と聞いてみてください。決算書、株主構成、借入金、従業員、取引先、許認可を踏まえて具体的に説明できる担当者なら、実務での対応も期待しやすいです。
後継者問題の解決策は、M&Aだけではありません。親族内承継、従業員承継、持株会社化、廃業、事業の一部譲渡なども選択肢になります。
一般的なM&A仲介会社は、成約を前提に話を進めがちです。だからこそ、M&A以外の選択肢を含めて比較してくれるかを確認しましょう。こういうケースは珍しくありません。相談した結果、すぐ売るのではなく、数年かけて財務整理をしてから譲渡した方がよい会社もあります。
無料相談は、情報収集の場として有効です。ただ、何も準備せずに相談すると、仲介会社の説明を聞くだけで終わってしまいます。もったいないです。
相談前に整理すべきことは、難しい資料ではありません。経営者自身が「何を守り、何を譲れるか」を言葉にしておくことです。
希望価格は大切ですが、根拠が必要です。純資産、営業利益、役員報酬、将来の成長性、買い手との相乗効果によって価格は変わります。相場を知るだけでなく、自社の価格が高く評価される理由を整理しておきましょう。
同時に、最低ラインも考えます。税金、手数料、借入金返済、退職金、家族の生活資金を踏まえて、どの水準を下回ると売却しにくいのかを把握しておくと、交渉で迷いにくくなります。
中小企業の経営者は、価格以上に従業員の将来を気にすることが多いです。雇用を維持したいのか、給与水準を守りたいのか、拠点を残したいのか、役員や親族の処遇をどうするのかを整理します。
取引先についても同じです。主要取引先との契約が社長個人の信用に支えられている場合、買い手へ引き継ぐ期間が必要です。ここを軽く見ると、成約後に売上が落ち、買い手との関係が悪化することがあります。
借入金がある会社では、金融機関対応が重要です。特に経営者保証が残っている場合、M&A後に保証を解除できるか、買い手がどのように引き継ぐかを確認しなければなりません。
最終契約で合意したつもりでも、金融機関の承諾がなければ保証解除が進まないことがあります。これは実務上の大きな論点です。無料相談の段階で、借入金残高、担保、個人保証、連帯保証人を整理しておきましょう。
M&A仲介業界は、後継者不足を背景に相談ニーズが続いています。一方で、仲介会社やアドバイザーの数が増え、競争は強まっています。上位会社でも、アドバイザーを増やした分だけ成約が伸びるとは限らず、成長鈍化や収益性の低下が見られる会社もあります。
営業利益率や平均年収は、転職希望者向けの情報に見えますが、経営者にとっても参考になります。高い報酬で優秀な人材を集める会社もあれば、採用費や人件費が増えて利益率が下がる会社もあります。ただし、経営者が見るべき本質は、担当者が自社の売却目的に合った支援をしてくれるかです。
相談時には、担当予定者の同業種支援実績、買い手候補の探し方、匿名で打診する範囲、手数料の総額、最低手数料、買い手側からの報酬の有無、途中で中止した場合の費用、経営者保証への対応、税務相談の体制を確認しましょう。
この質問に対し、担当者がその場しのぎではなく、分かりやすく説明できるかを見ます。中学生でも分かる言葉で説明できる担当者は、買い手や従業員への説明でも力を発揮しやすいです。
M&A仲介の売上ランキングは、相談先を探す入口として役立ちます。ただし、会社売却で重要なのは順位ではなく、自社の目的、手取り額、従業員、取引先、個人保証まで踏まえて支援できるかです。複数社を比較し、担当者の説明力と相性を見極めてから依頼先を決めましょう。
著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事
編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人