2025年版上場・非上場・会計系のM&A仲介会社一覧と概要
本記事では、中小企業庁の登録支援機関データなどを基に、多数存在するm&a仲介会社の中から、上場・非上場・会計系を中心に一覧を作成しました。数ある企業のなかで、どんな特徴や強みがあるのかを分かりやすく解説し、選ぶときの重要なポイントについてもご紹介します。
目次
▶目次ページ:M&Aの相談先(M&A仲介/コンサルタント)
中小企業の事業承継や事業拡大の一環として、M&A(企業の譲受や株式譲渡を含む組織再編)が世の中に広く浸透してきました。近年はオーナー経営者が高齢化し、早めに自社の承継プランを考える動きが活発化したこともあって、M&A仲介会社の数は大幅に増えています。ところが、数が増えすぎたために、どの企業にまず相談すればよいのか分かりにくいという声もよく耳にします。
そこで本記事では、中小企業庁が公開している「登録支援機関データベース」(2025年1月31日時点)などを参考に、定量的な情報を軸にM&A仲介会社を抽出し、その一覧を分かりやすくお示しします。また、上場企業や会計事務所系、歴史ある独立系など、さまざまな角度からM&A仲介会社を分類することで、多種多様なサービスや特徴があることを理解していただける内容を目指しました。
まずは、M&A支援機関の登録状況について確認してみましょう。2025年1月末時点で、中小企業庁に登録されているM&A支援機関は合計2,682社あります。これは、M&Aを専門に行う機関だけでなく、金融機関や士業法人なども含んだ総数です。
そのうち、M&A仲介やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を中心業務とする企業は958社ですが、実際は仲介会社が大多数を占めています。FAとは、譲渡企業・譲受企業のいずれか一方のみを支援する形態のM&A会社を指し、仲介会社とは異なる立ち位置です。
これほど多くの機関が登録されている背景には、中小企業のオーナー経営者にとってM&Aが以前より身近な選択肢になったことが挙げられます。加えて、業界としては成長が続いているため、次々に新規参入が進んだという点も大きいでしょう。しかし、この2,682という数字には、実際にはM&A成約の経験が少ない会社や、登録だけを行っているものの、ほとんどM&A実務を行っていない機関も含まれています。
2,682社という総数の中には、名目上はM&Aに取り組んでいるものの、実際には担当者がほとんど常駐していないケースもあり得ます。そこで、M&A業務専従者が10名以上在籍している会社だけを抽出したところ、数は135社にまで減少しました。
M&A案件の大半は、譲渡企業と譲受企業のマッチングが非常に重要で、そのためのネットワーク構築や経験値が求められます。専従者数が10名以上いれば、ある程度の組織力が期待できると考えられるため、判断材料の一つになります。もっとも、M&A仲介においては担当者個人の力量や経験値が大切であることも事実です。
さらに、2020年より前からM&A支援業務を開始していた会社に絞ると、135社の中から93社にまで数が減少します。業歴が浅い会社が必ずしも劣るわけではありませんが、長く活動している企業は、それだけノウハウやネットワークを蓄積している可能性が高いと考えられるでしょう。
前述の93社のうち、金融機関系や親会社がある企業、あるいはM&A仲介業務が本業ではなくデューデリジェンスやコンサル業務がメインの企業などは外した結果、独立系として残ったのが23社でした。これらはすべて、専従者10名以上で、2020年より前からM&A支援業務を実施している企業です。
また、M&A業務の取り組み姿勢や規模は会社によってさまざまで、特化型(医療、介護、ITなど)や地域密着型などもあります。今回のリストアップではあくまで「独立系」「専従者10名以上」「2020年より前からM&A支援」といった条件で抽出しており、「どこが絶対に良い」という推奨ではありません。
本記事では、M&A仲介会社の専従者数が多い順に並べた一覧を提示しますが、単純に規模が大きいから良い、というわけではありません。上場している企業であれば、一定の開示義務があり情報を得やすい半面、上場企業ゆえのビジネス拡大や利益確保のプレッシャーなど、方針の違いが出てくる場合があります。
一方、非上場企業は企業規模が比較的小さいことも多いですが、特定の分野に強みを持つケースも見られます。加えて会計事務所系のM&A仲介会社は、税務や会計の面で専門家が揃っているため、会社の財務状況の分析や承継に伴う税務計画などへ強く対応できるのが特徴です。
M&A仲介業界では、上場企業である「日本M&Aセンター」「ストライク」「M&Aキャピタルパートナーズ」が長く「三大大手」と呼ばれてきましたが、近年では「M&A総合研究所」も急速に成長し、「四大大手」として並び称されることが増えています。また、ブティックス、オンデック、インテグループ、名南M&Aといった企業も上場を果たしており、業界全体の活発さがうかがえます。
上場企業だけでなく、非上場企業としてM&A仲介事業を行っている会社も多数存在します。非上場会社には、一定の地域や業種に特化している企業も多く、医療・介護、IT、人材などそれぞれの専門領域でサービスを提供しているケースがあります。これら特化型の仲介会社は、特定分野の実情に通じたアドバイザーが在籍していることが多いため、課題やニーズに合わせた専門的なアドバイスを期待できます。
たとえば、医療や介護業界では診療所や薬局、介護施設などの承継が増えており、調剤薬局の仲介を専門とする会社や、病院やクリニックのM&Aを支援する会社が存在します。これらの業界では、一般的な企業譲渡とは違い、医療法などに関する知識や行政への届出対応など、より特有のノウハウが必要になります。こうした領域に強い仲介会社に相談することで、手戻りの少ないスムーズなプロセスを期待できるでしょう。
また、IT業界ではソフトウェア開発やウェブサービス運営など、技術者やプログラム資産を評価する力が求められます。ITに特化したM&A仲介会社では、システム面のデューデリジェンスやIT企業同士のシナジーの引き出し方、またエンジニアの人材獲得に関する助言などが可能となります。
人材系のM&A仲介会社も同様で、人材紹介事業や派遣事業の市場特性を深く理解しており、顧客基盤や求人企業とのつながりをどう評価するか、定量化しにくい部門の売上や登録スタッフ数などをどのように見込むかなど、専門的な判断ができます。
一部には、親会社が上場しており、その子会社としてM&A仲介を行っているケースも見られます。こうした企業は、親会社のリソースを活かして幅広いネットワークを構築している場合もありますが、一方で、親会社の方針や意思決定が大きく影響する可能性があります。
また、不動産や保険、人材紹介など、別事業を営む大企業グループの中の一部門としてM&A仲介を手掛けるところもあり、それぞれが得意とする分野を活かしながらサービスを提供しています。このように、非上場・特化型M&A仲介会社といっても、実にさまざまな形態やサービススタイルがあるのです。
会計事務所系のM&A仲介会社も存在感を高めています。会計事務所や税理士法人などのグループ会社として発足し、M&Aを専門的に扱う部門を分社化しているケースです。
会計事務所系では、税務・会計の視点が非常に強みとして挙げられます。たとえば、オーナー経営者にとっては、譲渡によるキャピタルゲイン課税や、相続・贈与関連の税務計画などが経営上とても重要です。そこで会計事務所系であれば、グループ内の税理士や公認会計士と連携して、譲渡に伴う税負担を軽減するためのアドバイスを受けやすいといえます。
ただし、会計事務所系の仲介会社であっても、デューデリジェンスや価値評価、コンサルティングを主体としたサービス体制の企業も少なくありません。そうした企業は、企業価値の算定や帳簿管理の精査には強い一方で、買い手と売り手を結びつけるマッチングの数やネットワーク力が必ずしも大きいわけではない場合があります。このように同じ「会計事務所系」という区分でも、その会社がどの業務を重視しているかは確認が必要です。
新興系M&A仲介会社としては、2020年以降にM&A支援業務を開始した企業が増えています。こうした企業が短期間で急成長する背景には、オンライン化やデジタルツールの活用など、今までの仲介会社にはなかった仕組みやプロセスの導入が挙げられます。
「M&A総合研究所」は、その代表例として急速に従業員数を増やし、売上高を大きく伸ばしてきた企業として知られています。2024年9月期時点で、165億円もの売上高を計上し、従業員数は440名に上ります。このような大手に成長した新興企業がさらに増える可能性がありますし、実際にIPO(新規株式公開)に向けた準備をしている企業も少なくありません。
インターネットを使ったプラットフォーム型M&Aサービスを展開する会社も近年増えてきました。たとえば、バトンズ、トランビ、M&Aサクシードなどは、オンラインで買い手・売り手をマッチングする仕組みを提供しており、手軽に登録できる点が特徴です。ただ、利便性と引き換えに、フルサポート型の仲介サービスと比べると、担当者による細やかな調整や専門的なアドバイスが限定的な場合もあるので、利用時にはサポート範囲をよく確認する必要があります。
前半で触れたように、2025年1月末時点の中小企業庁登録支援機関のうち、下記の条件を満たす企業として抽出されたのが「独立系のM&A仲介会社23社」です。
これら23社は、専従者数の多い順に以下のような特徴や数字を持っています(代表者名や所在地は「#原文」に基づきます)。それぞれ、上場企業、非上場企業、会計系、独立系などに分類され、以下のように多彩な顔ぶれです。
2020年以降にM&A支援業務を開始しながらも、すでに専従者が10名を超えている新興系のM&A仲介会社も存在します。本記事の前半で記載した一覧にあるように、M&A総合研究所やM&Aロイヤルアドバイザリー、CBコンサルティング、ペアキャピタル、Byside、ゴエンキャピタル、オーナーズ、バンクオブストラテジー、ライトライト、TSUNAGU、M&Aバリューエンジニアリング、プライマリーアドバイザリーなどがあります。
こうした企業は、短期間で人員を大幅に増やしたり、オンラインツールを導入して全国の譲渡企業や譲受企業とマッチングできる体制を構築したりと、新しい発想や仕組みで成長を遂げる例が目立ちます。
上場企業数が増加する背景には、M&A市場が活況を呈している点や、投資家からの注目度が高まっている点が挙げられます。すでに2023年にはジャパンM&Aソリューションが上場し、翌2024年にはインテグループが上場を果たしました。今後も上場を目指している仲介会社が複数存在するとみられており、IPOを経てさらに新たな大手候補として台頭してくる可能性があります。
上場をすると、決算情報や従業員数などを定期的に公開する義務を負い、社会的な信頼度を高めることができます。一方で、株主や投資家の要求に応えるために短期的な収益を重視するケースもあり、M&A仲介業務の進め方に影響が及ぶかもしれません。そのため、上場か非上場かによって、一概に優劣を判断するのは難しいのが現実です。
M&A仲介とは異なり、売り手(譲渡企業)もしくは買い手(譲受企業)のどちらか一方だけを支援する会社もあります。これは「FA(ファイナンシャル・アドバイザー)専業」のモデルで、譲渡企業にとっては買い手との交渉を自社の代理人として進めてもらえるメリットがありますし、逆に買い手側にとっては、ターゲット企業の選定から価格交渉までを専門家と二人三脚で進められます。
FA専業会社の例としては、アドバンストアイ株式会社(売り手FAが多いとされる)、HLサクセション株式会社(フーリハン・ローキーの子会社として売り手FAを中心に展開)、NECキャピタルソリューション株式会社、マクサス・コーポレートアドバイザリー株式会社などが挙げられます。FAは中立である仲介とは異なり、依頼主の立場を守ることを最優先に考えるため、アドバイザーの腕次第では有利な条件を引き出しやすいといわれます。
M&Aを考える際、まずは「どのような支援を求めるか」を整理し、それに合う仲介会社やFA会社を探すことが大切です。以下のような要素が主な検討ポイントとなります。
専従者の人数や組織規模
規模が大きい仲介会社ほど、マッチング先のネットワークが広い可能性があります。一方で、小規模企業でも担当者個人の力量が高い場合、密なコミュニケーションや柔軟な対応を期待できます。
上場か非上場か
上場企業であれば社会的信用が高い反面、利益目標や株主の意向を重視する傾向がある可能性もあります。非上場の場合は、多様なサービスを提供する企業もあり、特定の分野や地域に強い会社を選ぶことができるでしょう。
業歴と実績
長く営業している企業はノウハウや人脈が蓄積されている可能性が高く、担当者の経験値も豊富なことが多いです。一方、新興系でも独自のテクノロジーやITを活用した効率的な仲介手法を持つところもあるため、一概に古参が常に優位とは言えません。
専門領域への強み
会計事務所系であれば税務面が手厚い、医療・介護特化型なら関連法令や診療報酬、社会保障制度への知見があるなど、業種特化の仲介会社はその道に強い点が魅力です。
担当アドバイザーの人柄や相性
どれだけ企業の看板が有名でも、実際の担当者との相性や経験値が合わなければスムーズに進まないことが多いです。実際に面談して信頼関係を築けそうかを見極めるのも大事です。
M&Aの世界には多種多様なプレイヤーがおり、上場・非上場、会計事務所系、特化型、新興など、それぞれ一長一短があります。大事なのは、オーナー経営者が自社の事情や目標を明確にしたうえで、最適な相手とタッグを組むことです。必ずしも規模の大きい仲介会社がベストとは限りませんし、あるいは地域特化型が常に有利だとも限りません。
このため、まずは複数の仲介会社やFA会社と面談し、担当者の話を聞いてみると良いでしょう。実際にどの程度の実績があるのか、似た業種や近い規模の案件をどれだけ手掛けてきたか、税務や会計はどこまでサポートしてもらえるのかなど、細かく質問してみるとイメージがつかみやすくなります。
また、仲介手数料や成功報酬の算定方法、支払いタイミングなども事前に確認しておく必要があります。会社によっては着手金の有無が異なったり、最低報酬が設定されていたりします。とくに譲渡側のオーナーにとっては、成功報酬の発生タイミングや金額が納得できるものでなければ、最終的に後悔が残るかもしれません。
M&Aの成否を握るのは、担当者の経験や交渉力、そして人間的な信頼関係であることが往々にして多いです。大手と契約していても、担当者が忙しすぎるためにレスポンスが遅くなり、その間に交渉がこじれてしまう例もあるといわれます。逆に知名度はさほど高くなくとも、こまめに連絡を取り合い、誠実に対応してくれる仲介会社のほうがスムーズに進むケースもあるでしょう。
結局のところ、「どの仲介会社が絶対に良いか」という答えはなく、利用者の目的や条件、そして担当者との相性次第で変わります。本記事でご紹介した一覧は、数多あるM&A仲介会社のなかから一定の基準で抽出したものにすぎません。誰に相談するかを決める際には、記事中で取り上げた上場・非上場・特化型・会計事務所系・新興系などの違いを意識しつつ、いろいろな会社に相談して比較検討するのが望ましいでしょう。
さらに、銀行グループや信金キャピタルなど、金融機関系列のM&A部門も選択肢になるかもしれません。地方銀行と連携を深めた地域特化型の仲介会社や、税理士法人系が強い地方のネットワークなど、地域や業種を軸に探すことで、有力な支援先が見つかる可能性も十分にあります。
仮に規模の大きな会社と提携しても、実際の担当者は地方支店に数人しかいないということもありますし、その逆に小規模でも特定地域では圧倒的な情報収集能力を誇る会社も存在します。こうした事情を含めて、広い視野で検討することが重要です。
M&A仲介会社は2,682社も存在するとされますが、専従者数や業歴などで絞ると数は一気に減り、実績や経験をもつ企業は限られてくることが分かります。本記事で挙げた一覧はあくまで選択肢の一部ですが、それぞれ上場・非上場・会計事務所系・新興系など特色が異なり、得意分野やサービス体制が多彩です。譲渡企業・譲受企業とも、最終的には担当者の能力や信頼関係がカギとなりますので、看板だけにとらわれず、複数社を比較検討しながら自社の条件に合う仲介会社を探すことが大切です。
著者|竹川 満 マネージャー
野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事