レーマン方式とは?報酬計算方法とメリットデメリットの解説

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レーマン方式の計算方法とM&A手数料の注意点を詳しく解説

レーマン方式はM&Aの成功報酬を計算する代表的な仕組みです。料率、計算例、報酬基準額、最低報酬、見積比較の注意点を会社売却の手取りに結び付けて解説します。

目次

  1. レーマン方式は何を確認する計算体系か
  2. 成功報酬の計算は階層ごとに分ける
  3. 報酬基準額の違いで手取りは変わる
  4. 最低報酬と別費用を含めて総額を見る
  5. 見積比較で確認したい契約前の実務
  6. 会社売却でレーマン方式を活かす進め方
  7. まとめ

レーマン方式とは?報酬計算方法とメリットデメリットの解説

レーマン方式は何を確認する計算体系か

会社売却を考え始めると、譲渡価格より先に「手数料はいくらかかるのか」が気になることがあります。特にM&A(合併・買収)の成功報酬は、数百万円から数千万円になることもあります。計算の仕組みを知らないまま契約すると、後で負担感に驚くこともあるでしょう。

レーマン方式とは、M&A仲介会社やFA、アドバイザーに支払う成功報酬を、取引金額に応じて段階的に計算する代表的な方式です。最大の特徴は、取引金額が大きくなるほど手数料率が下がる「逓減料率」にあります。逓減とは、金額が増えるにつれて割合が低くなるという意味です。

一般的な料率は5%から1%へ下がる

日本のM&A実務では、次のような料率が一つの目安として使われます。5億円以下の部分は5%、5億円超10億円以下の部分は4%、10億円超50億円以下の部分は3%、50億円超100億円以下の部分は2%、100億円超の部分は1%です。

ここで大切なのは、「全体に1つの料率を掛けるわけではない」という点です。10億円を超えたからといって、全体に3%を掛けるのではありません。階段のように金額を区切り、それぞれの部分に対応する料率を掛けます。

意外と多い落とし穴です。見積書に「レーマン方式」と書かれていても、料率表だけを見て安心せず、実際に自社の案件でいくらになるのかを数字で確認する必要があります。

成功報酬型でも無料とは限らない

レーマン方式は、一般に成約時の成功報酬を計算するための仕組みです。成約しない限り成功報酬が発生しない形であれば、未成約時の大きな支払いを避けやすくなります。

ただし、着手金、月額報酬、中間報酬、実費などが別に設定されている場合があります。つまり「成功報酬型」と「完全成功報酬制」は同じではありません。契約前には、成功報酬の計算方法だけでなく、成約前に発生する費用の有無も確認しましょう。

成功報酬の計算は階層ごとに分ける

レーマン方式の計算は、考え方さえ分かれば難しくありません。難しく見える理由は、金額の区分ごとに分けて計算するためです。電卓で一度試算してみると、仕組みはかなり整理できます。

15億円の取引で計算してみる

報酬基準額が15億円の場合を例にします。一般的な5%から1%の料率表を使うと、計算は次のようになります。

5億円以下の部分は、5億円に5%を掛けるため2,500万円です。5億円超10億円以下の部分は、5億円に4%を掛けるため2,000万円です。10億円超15億円以下の部分は、5億円に3%を掛けるため1,500万円です。

この3つを合計すると、成功報酬は6,000万円になります。

全体に3%を掛ける計算ではない

15億円が10億円超50億円以下の区分に入るからといって、15億円全体に3%を掛けるわけではありません。この誤解があると、見積書を見たときに「思ったより高い」「思ったより安い」と感じやすくなります。

レーマン方式では、下の階層ほど高い料率、上の階層ほど低い料率が適用されます。そのため、取引金額が5億円から5億1,000万円に増えても、報酬が急に大きく跳ね上がるわけではありません。

計算式よりも確認すべきは前提条件

計算式そのものは単純です。問題は、何を「15億円」と見るかです。株式の譲渡価格だけを基準にするのか、借入金まで含めるのか、買掛金や未払金まで含めるのかで、報酬基準額は大きく変わります。

M&A実務では、ここで判断が止まることがあります。経営者は「売却価格に料率を掛ける」と思っていても、仲介契約書では借入金を含めた企業価値を基準にしているケースがあるためです。

報酬基準額の違いで手取りは変わる

レーマン方式で最も重要なのは、料率ではなく報酬基準額です。同じ料率表を使っても、基準額の定義が違えば、成功報酬は大きく変わります。会社売却では、最終的な手取り額にも直結します。

株価レーマンは株式の譲渡対価を基準にする

株価レーマンとは、株式の譲渡対価を報酬基準額にする方式です。中小企業の株式譲渡では、経営者が受け取る株式売却代金を土台にするため、比較的分かりやすい方式です。

借入金や買掛金などを基準額に含めないため、4つの方式の中では手数料を抑えやすい傾向があります。売り手の経営者から見ると、手取り額を把握しやすい点もメリットです。

企業価値レーマンは有利子負債を含める

企業価値レーマンは、株式の譲渡対価に銀行借入などの有利子負債を加えて報酬基準額にする方式です。有利子負債とは、利息を支払う必要がある借入金などを指します。

たとえば、株式譲渡対価が5億円でも、借入金が4億円あれば、報酬基準額は9億円になる可能性があります。借入金が多い会社では、株価レーマンと比べて手数料が大きくなりやすい方式です。

移動総資産レーマンは最も高額になりやすい

移動総資産レーマンは、株式譲渡対価に負債総額を加えて報酬基準額にする方式です。負債総額には、銀行借入だけでなく、買掛金や未払金などの流動負債を含める考え方もあります。

この方式は、4つの中で報酬基準額が最も大きくなりやすいです。売却価格だけを見ると納得できる手数料でも、移動総資産を基準にすると想定より1,000万円以上高くなることがあります。負債の多い業種では、特に慎重な確認が必要です。

オーナー受取額レーマンは役員借入金などを含める

オーナー受取額レーマンは、株式譲渡対価に、オーナーへの役員借入金返済額や役員退職金などを加えて報酬基準額にする方式です。役員借入金とは、経営者が会社に貸し付けているお金を指します。

この方式は、経営者個人が実質的に受け取る金額を土台にする考え方です。株式代金だけでなく、退職金や貸付金返済を組み合わせる場合は、税務上の手取り額と手数料の両方を見ながら検討する必要があります。

契約書では名称より定義を読む

「株価レーマン」「企業価値レーマン」といった名称が書かれていても、会社ごとに細かな定義が違うことがあります。役員退職金を含むのか、役員借入金を含むのか、現預金を控除するのか。ここを曖昧にしたまま進めると、クロージング直前に支払額で揉めることがあります。

名称ではなく、報酬基準額の算定式を読みましょう。分からない場合は、「この条件で成約した場合、税込で最終的にいくら支払うのか」と聞くのが実務的です。

最低報酬と別費用を含めて総額を見る

レーマン方式の計算結果だけを見て、M&A費用の全体を判断するのは危険です。小規模M&Aでは、計算上の成功報酬よりも最低報酬の方が高くなることがあります。ここは手取り額に直接影響します。

最低成功報酬は小規模案件ほど重くなる

多くのM&A仲介会社やアドバイザーは、最低成功報酬を設けています。金額は会社により異なりますが、数百万円から2,000万円程度など幅があります。

たとえば、レーマン方式で計算した成功報酬が800万円でも、最低成功報酬が1,500万円であれば、支払額は1,500万円になります。譲渡価格が小さい案件ほど、実質的な手数料率が高くなりやすい構造です。

「料率5%だから大丈夫」と考えるのではなく、最低報酬が適用された場合の負担割合を確認しましょう。譲渡価格に対して手数料が何%になるかを見ると、費用感をつかみやすくなります。

着手金や中間報酬も見落とさない

M&Aでは、成功報酬以外に費用が発生することがあります。正式依頼時の着手金、毎月発生する月額報酬、基本合意書の締結時に支払う中間報酬、外部専門家へのデューデリジェンス費用などです。

デューデリジェンスとは、買い手が対象会社の財務、税務、法務、労務などを調査する手続です。費用負担は案件や契約により異なるため、売り手側に請求される費用と、買い手側が負担する費用を分けて確認しましょう。


項目 発生タイミング 一般的な金額感 返金有無
相談料 契約前 無料〜数万円 不要
着手金 業務委託契約時 0〜200万円 返金なし
リテイナーフィー 契約締結後毎月 20〜200万円 返金なし
中間報酬 基本合意書締結時 成功報酬の10〜20% 契約により異なる
成功報酬 クロージング時 レーマン方式で計算
DD費用 デューデリジェンス後 ケースにより変動


完全成功報酬制との違いを理解する

完全成功報酬制とは、一般に着手金や中間報酬を設けず、成約時の成功報酬のみを請求する報酬体系です。初期負担を抑えやすいため、会社売却を検討し始めた経営者にとって相談しやすい面があります。

一方で、完全成功報酬制でも最低成功報酬が設定されている場合があります。また、外部専門家費用や実費が別途発生することもあります。名称だけで判断せず、支払う可能性がある費用を一覧にして確認することが大切です。

逆レーマン方式は小規模案件で有利な場合もある

一部では、通常のレーマン方式とは逆に、取引金額が小さい部分ほど低い料率を設定する逆レーマン方式があります。小規模案件では費用を抑えられる可能性がありますが、取引金額が大きくなると通常の方式より高くなることもあります。

自社の想定譲渡価格、最低報酬、別費用を合わせて比べること。これが現実的な判断軸です。

見積比較で確認したい契約前の実務

M&A仲介会社を比較するとき、料率だけを比べても十分ではありません。同じ5%から1%のレーマン方式でも、報酬基準額、最低報酬、着手金、支払時期、支援範囲が違えば、総額も満足度も変わります。

見積書では総額と前提をそろえる

複数社に見積を依頼する場合は、同じ前提で比較することが重要です。想定株式価値、借入金、役員借入金、役員退職金、最低報酬、消費税、実費を同じ条件にそろえます。

確認すべき点は、報酬基準額が何か、成功報酬の料率区分はどうなっているか、最低報酬はいくらか、成約前に支払う費用はあるか、途中で契約解除した場合の費用はあるか、という5点です。

中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、仲介者やFAに対して、手数料の算定基準や提供業務の内容を契約前に分かりやすく説明することが求められています。経営者側も、説明を受けるだけでなく、疑問点を数字で確認する姿勢が大切です。

安さだけでなく支援範囲を見る

手数料が安くても、買い手候補の探索、企業価値評価、条件交渉、契約書の調整、税務論点の確認、金融機関対応まで十分に支援されなければ、結果的に不利な条件で成約することがあります。

たとえば、株式譲渡価格は高く見えても、役員退職金、未払役員報酬、個人保証、退職後の関与条件を整理しないまま進めると、手取りや精神的な負担が想定とずれることがあります。手数料の数百万円差だけで選ぶと、より大きな条件差を見落とすこともあります。

仲介会社の類型と専門性も確認する

M&A仲介会社には、上場会社系、非上場会社系、会計事務所系・士業系があります。みつきコンサルティングは、税理士法人を母体とする会計事務所系・士業系の代表的なM&A仲介会社です。報酬比較では、料率だけでなく税務・会計面の確認体制も見ておくと安心です。

利益相反と担当者の説明力も見る

仲介会社は、売り手と買い手の間に立つため、双方の利害を調整する立場になります。だからこそ、手数料体系だけでなく、利益相反への対応、担当者の説明力、情報管理体制を確認しましょう。

初回面談では、次の質問が有効です。自社の場合の報酬基準額はいくらか。最低報酬は適用されるか。買い手側からも報酬を受け取るのか。担当者は何件を同時に担当しているか。契約解除時の費用はあるか。

質問への回答が曖昧な場合は、契約を急がない方が安全です。M&Aは秘密保持が重要で、一度情報が外に出ると従業員、取引先、金融機関に不安が広がる可能性があります。

会社売却でレーマン方式を活かす進め方

レーマン方式は、単に手数料を計算するためのものではありません。契約前にうまく使えば、資金計画、手取り試算、専門家選定、条件交渉の判断材料になります。

自社の報酬基準額を複数パターンで試算する

まずは、株価レーマン、企業価値レーマン、移動総資産レーマン、オーナー受取額レーマンの4パターンで概算してみましょう。正確な企業価値算定でなくても構いません。大まかな差を把握するだけで、契約前に確認すべき論点が見えてきます。

たとえば、株式価値が3億円、借入金が2億円、買掛金などのその他負債が1億円ある会社では、基準額が3億円になる場合も、5億円になる場合も、6億円になる場合もあります。この差がそのまま成功報酬に影響します。

譲渡価格と手取り額を分けて考える

経営者にとって重要なのは、譲渡価格そのものではなく、税金や手数料を差し引いた後の手取り額です。株式譲渡では、個人株主に譲渡益が生じる場合、原則として申告分離課税の対象になります。税務は個別事情で変わるため、早い段階で専門家に確認しましょう。

役員退職金を組み合わせる場合も、法人側の損金算入、個人側の退職所得課税、買い手との価格調整が関係します。手数料を抑えることだけを優先すると、税引後の手取りで不利になる可能性もあります。

金融機関と個人保証の扱いも同時に確認する

借入金がある会社では、レーマン方式の報酬基準額だけでなく、金融機関対応も重要です。株式譲渡後に借入金をどう扱うか、経営者保証を解除できるか、担保提供をどう見直すかで、経営者の安心感は大きく変わります。

会社売却の目的が「引退」や「後継者問題の解決」であれば、売却代金だけでなく、保証や担保から離れられるかも大切な判断材料です。

契約前に最終支払額を文章で残す

口頭で「だいたいこのくらいです」と言われても、契約書に別の定義があれば、最終的には書面が優先されます。報酬基準額、料率、最低報酬、消費税、着手金、中間報酬、実費、解除時費用を文章で残しましょう。

実務では、見積書、重要事項説明書、業務委託契約書の3つを見比べると、表現が微妙に違うことがあります。少しでも違和感があれば、契約前に修正を依頼してください。小さな確認が、後の大きなトラブルを防ぎます。

交渉時は手数料より成約条件全体を見るる

手数料を数百万円下げることに集中しすぎると、譲渡価格、表明保証、役員退任時期、従業員の雇用維持、取引先対応といった本質的な条件を見落とすことがあります。

レーマン方式は費用を見える化する道具です。目的は、手数料を最小化することだけではなく、納得できる条件で安全に会社を引き継ぐことにあります。ここを間違えないようにしましょう。

まとめ

レーマン方式は、M&Aの成功報酬を段階的に計算する代表的な仕組みです。ただし、株価、企業価値、移動総資産、オーナー受取額のどれを基準にするかで支払額は大きく変わります。最低報酬や別費用も含めて見積を比べ、契約前に最終支払額を確認することが、会社売却の手取りと安心を守る第一歩です。

著者:竹川 満 マネージャー / M&Aアドバイザー 

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関・介護施設等へのM&Aを含む経営支援に従事

編集:M&A事業承継アドバイザーズ 編集部|運営:みつき税理士法人