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学習塾業界のM&Aの動向と成功事例やメリットデメリットを解説

「学習塾 M&Aって本当に有効なの?」そんな疑問に即答します。最新市場動向からメリット・事例・成功の秘訣まで、やさしく網羅的に解説します。

目次

  1. 学習塾M&Aが注目される背景
  2. 学習塾M&Aの売り手メリット
  3. 学習塾M&Aの買い手メリット
  4. 最新事例で学ぶシナジー創出のヒント
  5. 学習塾M&Aのデメリットと向き合い方
  6. 学習塾M&A成功への5つのポイント
  7. 学習塾M&Aで気を付けたい3つの注意点
  8. 学習塾M&A案件の探し方と相談先
  9. まとめ

学習塾M&Aが注目される背景

学習塾・学校業界とは

学習塾業界では少子化と人口減少により生徒数の確保が難しくなっています。一方、デジタル教育の普及やオンライン指導の台頭でビジネスモデルが大きく変化しました。こうした環境変化に迅速に対応し、経営基盤を固める方法としてM&Aが注目されています。

少子化が収益モデルに与える影響を乗り越える

生徒数の減少は売上減少に直結します。M&Aを活用して複数教室を統合したり、異なる年齢層を対象にサービスを拡張することで、収益源を多角化しリスクを分散できます。


地域を越えた教室再編で生徒数減少を補う

都市部でブランド力を持つ学習塾が、地方の塾を承継するケースが増えています。地方塾は大手の教材・ITインフラを活用でき、都市部の塾は新市場を獲得できるため双方に利点があります。

デジタル教育の波を取り込む

オンライン教材やAI学習プラットフォームの導入にはまとまった投資が必要です。単独での開発が難しい中小塾は、ITノウハウを持つ譲受企業と組むことで短期間でオンライン化を実現できます。

動画・AI教材の共有で教育品質を均一化

譲受企業が保有する動画講座やAI学習エンジンをグループ全教室で共有することで、指導品質のばらつきを抑えられます。

学習塾M&Aの売り手メリット

譲渡企業が受けられる典型的な利点は三つあります。

後継者問題の解消と事業継続

身内や従業員に後継者がいない場合でも、譲受企業に承継すれば教室も講師も生徒も守れます。経営者個人の保証解除が実現する例も多く、安心して次の人生を計画できます。

創業者利益の確定で新しい挑戦資金を得る

売却対価は営業利益の複数年分が目安ですが、ブランドや教材など無形資産が高く評価されればさらに上乗せされる可能性があります。得た資金でリタイア後の生活資金を確保したり、新規ビジネスに挑戦することが可能です。

大手資源の活用によるサービス品質向上

大手塾の豊富な教材、データ、マーケティング手法を利用することで、講師研修やICT活用が進み、指導レベルが飛躍的に高まります。


学習塾M&Aの買い手メリット

譲受企業側も大きな利点を得られます。

新市場へ短期間で参入しシェア拡大

既存教室を買収すれば、ゼロから校舎を設計・広告を打つ時間とコストを削減し、すぐに収益を上げられます。

異なる受験ノウハウを獲得し競争優位を確立

地域特有の入試情報や過去問分析を一挙に得ることで、他地域へ展開する際の失敗リスクを抑えられます。

優秀な講師陣をまとめて採用できる

講師採用・育成には時間と資金がかかります。M&Aにより既に実績のある講師チームを確保できるため、教育品質を保ったまま事業規模を拡大できます。

最新事例で学ぶシナジー創出のヒント

以下の実例は、異なる強みを掛け合わせて成功した典型例です。

Z会グループ(増進会HD)と栄光ゼミナールの融合

大学受験に強みを持つZ会と、小・中学生指導に強い栄光ゼミナールが連携し、幼児から大学受験までの一貫指導体制を確立しました。年齢層の拡張が生徒囲い込みに直結した好例です。

早稲田アカデミーの海外進出成功事例

早稲田アカデミーは米国の学習塾を買収し、ニューヨーク在住の日本人向け受験市場を開拓しました。現地に精通した講師とカリキュラムを一体で得られたことが成功要因です。

河合塾が医療系専門予備校を取り込み専門分野を強化

医療系予備校メディカルラボを擁するキョーイクHDをグループ化し、医学部受験ノウハウを獲得。大学受験の総合力に専門性を加えて差別化を実現しました。

学習塾M&Aのデメリットと向き合い方

M&Aは大きな成長機会をもたらしますが、一方で注意すべき課題も存在します。メリットだけで判断せず、リスクを具体的に把握したうえで対策を講じることが重要です。

異なる教育方針の統合が難しい

学習塾は教育理念や指導メソッドがブランドそのものです。異なる方針を持つ塾同士が統合するときは、教材や評価基準を段階的に合わせ、講師研修を重ねて共通文化を醸成する必要があります。

統合プロジェクトチームで摩擦を最小化

双方の教務責任者やベテラン講師を中心に合同チームを設け、カリキュラム改訂や進度表の標準化を進めると、現場の混乱が抑えられます。

財務的リスクが拡大する可能性

買収資金や統合作業には予想外の追加コストが生じる場合があります。過度なレバレッジは財務体質を弱めるため、資金調達計画とキャッシュフロー試算を慎重に行いましょう。

デューデリジェンスで潜在債務を見逃さない

買収前に専門家を交えて財務・税務・法務を徹底調査し、潜在債務や未払残業代などのリスクを可視化することが必須です。

事業増加に伴うコスト上昇

校舎やシステムが二重化すると、賃料・保守費などの固定費が膨らみます。短期的なコスト増に耐えられる運転資金を確保し、統廃合スケジュールを具体化しておくことが重要です。

経営戦略の相違による運営課題

成長目標や投資方針の違いから、意思決定が遅れたり重複投資が起こることがあります。統合初期に中期経営計画とKPIを共有し、役割分担を明確化するとブレを防げます。

学習塾M&A成功への5つのポイント

リスクを理解したうえで、以下のポイントを押さえると統合効果を最大化できます。

相性の良いパートナー選定

教育理念・対象学年・料金モデルが近い塾を選ぶと顧客離れが少なく、シナジーを早期に得やすいです。経営陣同士の相互信頼も欠かせません。

効果的な統合計画

統合後1年以内に達成すべき目標(売上〇%増・講師定着率〇%など)を数値化し、進捗を月次で検証する仕組みを整えます。

従業員への丁寧なコミュニケーション

買収理由・ビジョン・評価制度の変更点を早期に説明し、質疑応答の場を複数回設けることで不安を軽減できます。

柔軟な対応力

統合過程では想定外の課題が発生します。計画の前倒しやリスケジュールを恐れず、現場の声を基に優先順位を随時見直す姿勢が成功を支えます。

経営資源の最適活用

教材開発部門・IT部門・人事部門など、重複する機能は統合しつつ、強みの異なる分野はあえて両立させる「選択と集中」が肝要です。

学習塾M&Aで気を付けたい3つの注意点

実務上のチェックリストとして、次の三点は特に重要です。

徹底した事前調査と市場分析

対象塾の財務状況、生徒数の推移、地域の競合状況を多角的に分析し、買収後の需要予測を現実的に立てましょう。

法的・財務的側面の詳細検討

学校教育法・労働基準法・個人情報保護法などの遵守状況を確認し、許認可の承継方法や講師契約の引き継ぎ条件を整理します。

従業員管理と組織文化の統合

講師の待遇格差や評価制度の違いは離職の原因になります。統合前に報酬テーブルを試算し、人事制度統合のロードマップを提示すると安心感が高まります。

学習塾M&A案件の探し方と相談先

適切な案件を見つけるには、情報源の多さと信頼性が鍵です。


M&Aマッチングサイトを活用

オンラインで随時1,000件以上の案件を検索でき、匿名で打診が可能です。


地元金融機関に相談

地方銀行や信用金庫は地域企業の事業承継支援に積極的で、非公開案件を保有していることがあります。


M&A仲介会社に依頼

教育業界に詳しい仲介会社なら、条件に合う案件を絞り込み、専門家チームによるサポートも受けられます。仲介手数料や成功報酬の仕組みを事前に確認しましょう。

まとめ

少子化とオンライン化が進む今、学習塾M&Aは事業継続と成長の有力な選択肢です。メリットとデメリットを正しく理解し、パートナー選定・統合計画・従業員ケアを徹底すれば、シナジーを最大化できます。

著者|竹川 満  マネージャー

野村證券にて、法人・個人富裕層の資産運用を支援した後、本社企画部署では全支店の営業支援・全国の顧客の運用支援、新商品の導入等に携わる。みつきグループでは、教育機関への経営支援等に従事

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